「灰色の微笑」 |
Kaname Sugimoto BACK |
序 削り取られた紋章・・・ それは2通りの意味を持つ。 名誉を失い追放された者。或いは・・・ 自ら名誉を捨て主君への誓約を破棄した者・・・ 城門へと続く石畳の道が午後の日に映える。 手入れされた葦毛の牝馬。その白い首を軽く撫で手綱と鬣を握り、年若い騎士は軽い動作で跨った。肩越しに振りかえり、城の一角を仰ぎ見る。バルコニーには黒い軍服の長身の男が陽光を纏っている。 彼の主君。 いつものように、彼の出陣を見守っている。 黒い服の右手が静かに挙がる。 それに応えるように、青の槍騎士は手綱を引き馬の向きを変える。バルコニーを正面にすると乗馬の姿勢のまま右手を挙げ敬礼をする。 そして再び向きを変え、城門の外を目指す。 先には黒鹿毛の馬を御す騎士が1人、彼が来るのを待っていた。灰色の皮鎧に身を包む明るい髪の男。 ベオウルフ・・・ 彼の皮鎧に紋章は無い。 これもまた「裏切り」の行為であることは明白なのだろう。そう思いながら、片頬で笑う男の口許の笑窪を見つめる。 あたり前のように口づけで始まる。 一度は拒んでみせる。けれど彼は止めない。 やむなく…と云う風を装って、やがて彼の求めに応じる。 思い出してみる。 初めての時は自分から誘ったのだった。 洗っても身体に染み入った薬のせいで熱く疼いてしかたが無かった。 唇をついばむように重ねた。そして・・・ 彼の口許に自ら肌を押し付けた。 どうせ見られていたんだ。 喘ぎが口から漏れる。 力強い繊細な指の動きが胸を這い、感じやすい部分が舌先で転がされ、交互に吸われていく。 ああ・・・。 この動きが好きだ。頭の中が空白になる。全てのものから開放される。 全て・・・ そこにはキュアン様も含まれるのか・・・ あれほど焦がれる「還るべき場所」・・・ 自分の魂は行き先を見失ったまま哀れに漂流している。 そして彼もまた、 何かを探しているのだろうか。 失われた騎士としての、魂の埋もれる場所を。 或いはまた そこに行き着く道程を・・・ つづく (注:これは「EXILE」シリーズ、「ANAM」他、当サイトで紹介しているFE聖戦の同人誌をあらかじめ読んでいないと分かりません。悪しからず御了承下さいませm(_ _)m)。一応続きます。 |