接眼鏡 (2)

Eyepieces (Oculars)


アイピースに関連して思いつくままに書いたものです。独断と偏見が多いので、ご参考までに。
ブランドン(Brandon)とマスヤマ

■その1


 米国製でBrandonというブランドのアイピースがあります。アメリカンサイズで焦点距離は8〜32 mm、形式はプローセル(一部改良)とのこと。見かけ視界は50゜ほどですが、とにかくコントラストが高いそうです。価格はUS$ 150程度らしいのですが、Sky and telescopeなどの広告にも、販売店のホームページでも見かけたことがありません。日本にも代理店があるそうですが、米国よりもかなり高めの価格をつけているようです。

 先頃、京都の国際光器に中古ですが、5本セット品で39,800円の出物がありました。問い合わせてみましたが、残念ながらすぐに売れてしまったようです。逃がした魚は大きいか・・・。
 メールアドレスは、magellan@ask.or.jp(英文用)、 Kkohki@ask.or.jp(和文用)

■その2

 このところ「文通」している、米国フロリダ州在住のA.Pettit氏より、同社のウエッブサイトを知らせていただきました。
   http://www.handsonoptics.com/astronomy/brandon.html
 広告文によりますと、その特徴は次のとおりです。
 ・100%米国製  ・コントラストが抜群  ・惑星の微妙な模様が見える  ・コントラストが高くて背景が暗いので、ディテールがわかる  ・どんな大メーカーの製品でもこのコントラストにはかなわない  ・見かけ視界は45度で、平坦な視界、カミソリの切れ味  ・オルソは51,000個の販売実績

 価格は次のとおりです。1.25"のオルソにしては約20,000円弱となるわけで、高めですね(同じAbbe オルソのZeissよりは安いですが・・・)。
 48mm Brandon Orthoscopic (2.0") - $ 279
 32mm Brandon Widefield (2.0") - $ 179
 24mm, 16mm, 12mm and 8mm (1.25") - $ 155
 Dakin 2.4x Barlow - $ 119

■その3

 上記内容を望遠鏡フォーラムに投稿しましたら、48 mmは笠井扱いのPL 50 mmと、32 mmは同じくWV 32 mmと同じではないかということでした。これらはJAPANOPTIC製です(WV 32 mmは先月号で紹介済み)。

 BrandonのアイピースはあのQuestar御用達のアイピースとなっています。話に聞くと、コントラストがやはり高いそうです。これは試しに買ってみたいと思います。重星や惑星用に8 mmあたりが良いかもしれません。 (写真はBrandonアイピース)


■その4

 マスヤマ・アイピースを覚えていますか?倒産した東京のアトムの専売でした。ドームでおなじみのヒューマンコムのホームページを見ていたら、マスヤマ・アイピースが販売されていましたので紹介します。どなたかお買いになってみては?

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ヒュ−マンコム株式会社・天文台事業部 [98年 5月 07日 (木) 19時 17分]

アイピ−ス特価情報・・・マスヤマアイピ−ス特価販売中

7.5 mm 52゜定価8,800円・・・特価7,000円
10 mm 52゜定価8,400円・・・特価6,700円
20 mm 52゜定価8,800円・・・特価7,000円
25 mm 52゜定価8,800円・・・特価7,000円
30 mm 52゜定価9,800円・・・特価7,800円
35 mm 52゜定価9,800円・・・特価7,800円
45 mm 50゜定価22,000円・・・特価17,500円
ワイド25 mm 65゜定価17,000円・・特価13,500円
45゜倒立プリズム31.7 mm 定価8,500円・・特価6,300円
商品は全て消費税込みです。送料は2本まで700円、3本以上は無料です。
〒365-0021 埼玉県鴻巣市安養寺西裏340-1 ヒュ−マンコム株式会社 まで。お申し込みは現金書留で。
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ロシア製アイピース

はじめに

 マクストフ系統を初めとするロシア製の望遠鏡が普及するようになりました。これに伴い、いろいろな付属品も輸入販売されています。国産や米国産のものともひと味違ったアクセサリーのうちの、アイピースについて紹介します。


 INTES-MICROインテス−マイクロ社はモスクワにある望遠鏡会社で、30代の社長に率いられる若い会社です。設計は自社で行い、生産をロシア軍の工場に依頼しているとのことです。ALTERシリーズというふところの深いのマクストフカセグレンが著名です。


 これとよく似た名前のINTESインテス社というのがモスクワにあります。MKシリーズのマクストフカセグレンが著名です。アルミの丸棒から鏡筒を旋盤でくり抜くという、西側では考えられないことをしています。同社は協同組合形式となっており、職人気質の人が多いそうです。

アイピース

 INTES-MICRO社のアイピースには次の種類があります。いずれも1 1/4インチのアメリカンサイズです。最近多い、スマイスレンズ(アイピース先端の凹レンズ、一種のバーローレンズ)を使っていません。ペンタックスのXLシリーズやビクセンのLV、LVWシリーズは、ハイアイレリーフをかせぐためにスマイスレンズを組み込んでいます。

・WA-12 mm、見かけ視界70度、\13,000
 ケーニッヒ型をベースにしたもので、広視野アイピースです。
 私はこれを購入しました。見かけ視界の広さは感激ものです。高価なTeleVueのアイピースと比べると、お買い得だと思います。

・WA-21 mm、見かけ視界70度、\13,000
 ケルナー型をベースにしたもので、広視野アイピースです。これも購入しましたが、PL-26 mmと同じ程度の実視界ながらより高い倍率が得られます。

・BERTELE-18 mm、見かけ視界50度、\13,000
 4群6枚のベルテレ型で、視野周辺のコマやディストーション(歪曲収差)を軽減します。

・ST-6 mm、見かけ視界28度、\13,000
 STEINHEIL-TRIPLETシュタインハイル−トリプレットという、1群3枚の構成です。ルーペなどでよく用いられていますが、アイピースとしてはかつてツアイスで作られていたようです。文献でその名を見かけますが、現在入手可能な実物はこれだけでしょう。
 コントラストが極めて高く、視界は狭いですが、惑星観察には最適です。視野中心にゴーストが発生するので、対象を中心からはずす必要があるそうです。

・ST-9 mm、見かけ視界28度、\13,000
 ST-6 mmと同様です。
・ST-12 mm、見かけ視界28度、\13,000
 ST-6 mmと同様です。

・SWV-30 mm、見かけ視界90度、\38,500、2インチ
 4群6枚の構成です。Fの小さな反射望遠鏡でも球面収差を減らすような設計になっています。超広視野のアイピースで、Leitzライツ社のPlanocularプラノキュラー12 mm(生産中止、見かけ視界90度、当時の価格\128,000!)を参考に低価格になるよう、スペックダウンしたものです。ぜひ一度のぞいてみたいものです。

バーローレンズ

 ドブソニアンやRFT短焦点屈折のようなF値の明るい望遠鏡では、アイピースに入射する角度が大きく、アイピースの性能を十分に発揮できません。バーローレンズを併用すると、入射角が小さくなり、アイピースの性能を損なうことがありません。さらに望遠鏡の焦点面の湾曲を補正し、視野周辺の像を改善します。もっとも使いよいのは、アイレリーフの長い長焦点アイピースを使用して高倍率が得られることです。

 INTES-MICRO社のバーローレンズには次の種類があります。
・惑星用2.4xバーローレンズ、\7,800
 マクストフカセグレン用に開発されたものですが、屈折やシュミカセにも適合します。私はこれを購入しました。SCHWARZ-120というF8.3のアクロマート屈折に使用しています。高倍率でも像の乱れはなく、アイレリーフの長いアイピースを使って高倍率が得られるので重宝しています。
・惑星用3xバーローレンズ、\8,800
 2.4xと同じような性能ですが、倍率が高くなっています。

おわりに

 ロシアの光学製品には旧西側にないユニークなものが多くあります。どうしてこのような製品が生み出されたのかはよくわかりませんが、おそらく広視界が必要な軍事用光学製品のノウハウが生かされているのだろうと思います。また、性能に比べて価格が安いのも為替相場のマジック故だそうですので、今後もロシア・ルーブルが弱いことを期待したいと思います。今後もいろいろな製品が発表されるだろうと思いますが、懐のさびしいアマチュア天文ファンとしては安価な品を心待ちにしたいと思います。




ディスカウント・アイピース

はじめに

 ペンタックスやテレビューなどの高級アイピースが一般化する中で、ディスカウントアイピースというのもあります。最近目についた商品をいくつか紹介したい思います。

誠報社

 おなじみの誠報社に行くと、いろいろなディスカウントアイピースが置いてあります(その他にもディスカウント商品が豊富です)。私が見かけたいくつかのものを紹介しますが、カートンの製品が多いようです。

○1.25"インチアメリカンサイズ
・カートン Or-6 mm \1,800
・カートン MH-12.5 mm \1,800 (24.5 mm)
・カートン K-25 mm \1,800
・カートン Er-32 mm \3,600 (36.4 mm)
・カートン GEN-28 mm \4,800 見かけ視界56度
・ボシュロム A.S.P. 30 mm \500
・ケンコー ズーム 8.8-22 mm \5,500
・オリジナル Or-4, 6, 9, 12.5, 25 mm 各\4,000
・オリジナル K-9, 12, 25 mm 各\2,000
・オリジナル Er-16, 20, 25 mm \6,800-7,800
・オリジナル PL-6.3, 7.5, 10, 12.5, 17, 26 mm \4,800 PL-32, 40 mm \6,800

○36.4 mmネジ
・オリジナルK-40 mm \3,800
・オリジナルOr-32 m \5,500

 オリジナル製品のOr(オルソスコーピック)、K(ケルナー)、Er(エルフレ)は見口金具が先細りのタイプです。これらは○にT字のマークの谷光学の製品です。PL(プローセルまたはプレースル)は台湾のSYNTA社製で、京都の国際光器が卸したものです(天体望遠鏡フォーラムの情報による)。

 これらのうち、実際に手に取ってみたものは次のものです。
 Or-6 mmはアッベ型オルソスコーピックと思われ、見かけ視界は45度ほどですが、アイレリーフが短くてのぞきづらいのものでした。
 K-25 mmは見かけ視界は50度ほどで中長焦点のせいか、わりあいとのぞきやすいものでした。
 Er-32 mmはネジ山のピッチが1 mmに対応しています。見かけ視界は60度近くありますが、視野絞りをはずすと70度以上もあります。もっともこの時は周辺の境界がはっきりしなくなります。なお、このアイピースはネジで2分割できますので、視野絞りをはずした状態で36.4 mm→50.8 mmアダプター(VIVEN製は市価2,200円程度)に付けると、安価な2インチアイピースに変貌します。


 GEN-28 mmとASP-30 mmは以前に紹介しました。
 PL-26 mmは昨年、通販にて購入しました。ゴムの見口(アイカップ)付きで、見かけ視界は50度ほどあります。性能のほどは良好です。


国際光器

○1.25"インチアメリカンサイズ
・オリジナル K-6, 9, 12, 18, 20, 25, 30, 40 mm \3,300 見かけ視界40-45度
・オリジナル Or-4, 5, 6, 7, 9, 12.5, 18, 25 mm \3,800 見かけ視界41-47度
・オリジナル Er-16, 20, 25 mm \7,800 見かけ視界63-65度
・オリジナル PL-6.3, 7.5, 10, 12.5, 26 mm \4,500 (見かけ視界50度) PL-32,40 \5,500(見かけ視界32 mmは50度、40 mmは43度)

 オリジナルのKとOrには24.5 mmサイズもあります。またErは先細りのタイプですから、KとOrを含めて谷光学製と思われます。PLは台湾のSYNTA製です。
 また、ユニトロンが発売していたWide Scan 30 mmをこの夏に復刻して販売しています。見かけ視界84度で定価\29,800(発売時特価\19,800)。


笠井トレーディング

○1.25"インチアメリカンサイズ
・PL-6.3, 7.5, 10, 12.5, 17, 20, 25 \4,000 見かけ視界50-52度、PL-32,40 \5,000見かけ視界32 mmは50度、40 mmは43度
・Er-16, 20, 25 mm \6,800, \7,200, \8,800 見かけ視界58-65度
 PLは台湾のSYNTA社製ですが、ゴム見口がありません。その分、安くなっているようです。Erシリーズは谷光学製ですが、上記三社とも共通ですから、価格を比べてお買い得品を買うとよいでしょう。


スターベース

○24.5 mmツアイスサイズ
・オリジナル Or-4, 5, 6, 7, 9, 12.5, 18 mm \4,000
・オリジナル Or-25 mm \4,500
・オリジナル K-20, 25 mm \3,000

 現物を見たことがありませんが、日本製だと思います。見やすい1.25"のアメリカンサイズが普及しているので、24.5 mmサイズを選ぶ理由はないと思います。


まとめ

 ディスカウントといいながらも、価格のわりにはそう悪いものはありません。むしろ気兼ねなく使えてよいかもしれません。以前に聞いた話では、アイピースなどの小物は、町工場のような下請け工場が生産して、メーカー別の金物をつけ替えているそうです。もちろん、価格に応じて塗装などの仕上げは変えているものと思われます。基本構造は変わらないので、それほど性能が悪いものはないようです。



No.112「最近のアイピースから」補足

 カートン光学のカタログ(1993年4月版)が出てきましたので、以前紹介しました格安品と同等の同社のアイピースについて補足します。
 ・ER 32 mm、見かけ視界は50度、定価\19,000
 ・OR 6 mm、見かけ視界は44度、定価\9,500
 ・K 25 mm、見かけ視界は44度、定価\7,500

 11月に誠報社を訪れたときには、K 25 mmはすでに売り切れており、ER 20 mmが置いてありました。価格は\1,800だったと思います。
 ・ER 20 mm、見かけ視界は44度、定価14,500

 また、最近、誠報社ではNZセンター出しという十字線入りアイピースを発売しましたが、その元になったのが
K 28 mmです。
 ・K 28 mm、見かけ視界は45度、定価\7,500

 その他としては、雑誌広告にある販売価格よりも店舗での価格の方が安く設定されているようです。このため、できるだけ店舗を訪れて買う方が、お買い得です。また、誠報社ではカートン光学の製品を安く販売しているので、今後もアイピースを始めとしていろいろなものが安価に入手できるだろうと思います。

 例えば、下記のものがあげられます。
 ・PL 8 mm、見かけ視界44度、定価\9,000 
 ・PL 15 mm、見かけ視界44度、定価\9,000
 ・OR 9 mm、見かけ視界44度、定価\9,500
 ・PL 12 mm、見かけ視界44度、定価\11,500

補足:1998年12月29日誠報社店頭にて
 歳末バーゲンセール直後の売れ残り品がいくつかありました。アイピースではEr 32 mmが\2,500、36.4 mm用天頂プリズムが\1,000、24.5 mmサイズ各種アイピースは\1,000など。その他ではケンコー11x80双眼鏡が\19,800、カートンスーパーノバ赤道儀がアルミ三脚付きで\39,800など。