「Exile 2.5」 (2)
Kaname Sugimoto
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「てっきりそうだと思ったんだが…」

「ま…お前がそうだとしても、必ずしも『徴(しるし)』を持っているとは限らんが」

「なにもしちゃいないさ。身体の隅々まで調べさせてもらっただけだ。頭のてっぺんからつま先までな」

「………」

「悪く思うな。体を見せろといっても大人しく言うことを聞くとは思えんのでな」

何のことかようやく意味が飲み込めた。聖戦士の徴。聖痕を探していたのだ。聖騎士ノヴァの傍系。だが自分には徴は無い。フィンにとって幼い頃からの微かな心の傷でもあった。

「お前は、自分の顔の意味するところを知っているか?」

「…!?……顔…!?」

「キュアンがなぜお前を気に入っていると思う」

トラバントの言葉には明らかにキュアン様と自分との関係を貶める刺が含まれていた。

「そんなこと。きさまには関係無い!!」
冷静にならなければいけなかったのに、羞恥心と怒りとが自分を追い詰めていくことに彼は気付かかなかった。




「ふっふ。これを返して欲しいか…?」
少年騎士の、脱がせた青い上着を掴み目の前でひらひらと弄びながらトラバントは言った。

その服を取り返そうとフィンは不用意に手を伸ばす。すんでのところでトラバントは服を掴んだ手を後ろに引く。虚しく宙を切る少年の手首を今度は逆の手で掴む。
「!!」
そのまま少年の身体を有無を言わさず引き寄せ、自分の身体の下に組み敷いた。
「何もしないと言ったじゃないか!!」
言ってしまってそれが敗北の言葉だと思い知らされる。

「そんな事は言っていない」
「傷付ける気はないと言っただけだ」

両の手首をひとまとめに頭の上で押さえ込まれ、両脚は体重の重みで動かすことが出来ない。
首筋に生暖かいものが走る。

「クッ…!!」

強く吸われる。皮膚に当たる鋭い歯の感触が、忘れ去った何かを思い出させる。微かな痛みと共にざらついた舌が肌を嬲っていく。

時間が止まる。



残酷な愛撫はゆっくりと首筋から鎖骨を通り胸へと下りていく。
声を出すまいと歯を食いしばるが無駄だった。

「…ハッ…」

乳首を強く吸われあの時の痛みが蘇える。とっくに消えかけた歯形をなぞるように舌が動く。
己の意思とは関係無く反応し、固く経ち上がるそこを、トラバントは笑いを浮かべながら指と口とで嬲りつづけた。胸の奥から産まれた熱が背筋と脇腹を通り下半身へ…。そして全身がおぞましい煉獄の熱に侵されていく。
抵抗する気力が萎えていく。何時の間にか自由を取り戻していた両手は、侵略者の身体を押しのけることをとうに諦め、己の目を閉ざし口を塞ぐことに懸命になっていた。



その行為の間、罪悪感から逃れる為の言い訳をひたすら考えた。だが直ぐに脈絡が崩れ文章にすらならない。全身を貫く炎に焼かれながらただひとつの言葉にすがり付き、呪文のように繰り返す。

こんな死に方はいやだ。
こんな死に方はいやだ。
こんな死に方はいやだ。

自分を殺す気がないことは分かっていた。それが何故かも分かっていた。自分の存在そのものが主君に向けた裏切りの刃となるように。
だから自分は死ななければならない。

けれど…。

キュアン様の名を辱める死に方だけはしてはならない。




咽喉の渇きで目が覚めた。
耳元で愛馬が微かに鼻を鳴らす。
日はとっぷりと暮れ、下草には夜露が降りている。
「帰らないと…」
足元に散らかった衣服をかき集め、のろのろと身に着ける。

戦勝の宴に自分が顔を見せないと、皆がいぶかしむだろう。キュアン様に心配を掛けさせる訳にはいかない。
自分自身がキュアン様に向けられた罠とならないように、あの方のもとに帰らなければならない。何事もなく。

シルベール城までの道のりは半時にも満たないほど近い。
だがキュアン様の「王城」への帰還の道は一層遠く離れてしまった。
一生かかっても帰り着けるかどうか。
だが帰らなければならなかった。
自分の帰る場所は他にはないのだから…。


(了)


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(注:これは同人誌「EXILE 2」の続きに来るはずだったお話。EXILEシリーズ、「ANAM」他、当サイトで紹介しているFE聖戦の同人誌をあらかじめ読んでいないと分かりません。悪しからず御了承下さいませm(_ _)m)。
うーん。現代ものに比べるとエロ度が足りないと感じるのは下品さが足りないからだな。歴史物だからじゃなくて騎士ものだから、と云うか、フィンだからか。その辺は、ね(^^;)。
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