CANP 2000参加記 (2)

CANP (CCD Astronomer's Network Party) 2000 (1) (2)

3)私のCCDスタイル

 このコーナーでは、アマチュアの方々の身近なCCD画像の撮影例をあげて紹介されました。

 「16 cm反射+冷却CCDによる惑星撮影と画像処理」 近藤弘之(東京都)

 口径16 cmのニュートン式反射望遠鏡を使って、ポテンシャルを一杯までに引き出した惑星画像を紹介されました。惑星撮像に対しても、冷却CCDは有効なことをあらためて感じました。

 「ビットランのカラーCCDカメラBJ-30Cの使用事例」 三田 明(埼玉県)

 一つのヘッドでカラー画像が得られるカメラによる銀河の画像を紹介されました。わずか60秒露出でもかなりの写りを見せています。もっとも、三田さんはLRGB用のカラー画像を撮像されており、違うカメラ、望遠鏡で撮像した画像を合成しています。時間のない出張撮影では便利なやり方です。

 「軽量システムによるCCD撮影の体験と展望」 元木基嗣(香川県)

 最近、冷却CCDに魅せられた初心者ながらも、工夫を加えて素晴らしい画像を撮影されています。紹介された工夫の過程が、私を含む多くのCCD使用者にとってたいへん参考になったと思います。

 「入門者のC8とST6によるスタイルなき画像撮影」 鈴木節雄(神奈川県)

 岡野氏から譲られたST-6とセレストロンC8シュミカセを用いた撮像事例を紹介されました。

 「私の撮影スタイル」 千村雄一(埼玉県)

 詳細は以下のサイトをご覧下さい。

 http://www.ksky.ne.jp/~chimura/can/canp2000.htm

 「解像感を下げないS/N改善法: Nebula Smoother」 岡野邦彦(東京都)

 星はシャープに、星雲は階調豊かにする画像処理の方法について説明されました。これによると口径わずか12.5 cmでもかなり良い画像になるとのことです。その手順は以下のとおりです(記憶違いの個所もあるかもしれません)。

 ・「ステライメージ3」のスターシャープフィルターを使って星のない画像を作る
 ・元画像から星のない画像をマイナスして、星だけので星雲のない画像を作る
 ・これより星が飽和した画像を作る(スターマスク)
 ・元画像とスターマスクを乗算する
 ・ガウスぼかしでS/Nを向上させた星雲のみ画像と、反転したスターマスクを乗算する
 ・要は星雲画像のみのS/Nをあげた画像と、星がシャープになっている画像とを加算したものである(アルゴリズムはやや複雑だが、ステライメージ4には搭載予定)

 この発表に対するコメントです。
 ・コニカのデジカメ用ソフトの「PC暗室」でも、これに近い処理ができるので、貼り出してある画像を見てほしい(川崎)

 「特設ベランダでのCCD観望と機材の改良:ピント合わせの際のいくつかの改善」 富田五郎(埼玉県)

 還暦を過ぎてから冷却CCD撮像を始めた富田さんは、メカトロニクスの専門家として、シュミカセのミラーシフトの低減やピント合わせの自動化を紹介されました。ピント合わせ用のモーターは、不安定なベランダ観測台においた望遠鏡に手を触れずに行うためとのことでした。

 お年にもかかわらず、工夫を怠らない姿勢は見習いたいものです。

写真-3  富田さんとミラーシフト防止案

Mr. Tomita who developed anti mirror shift system

 4)講演「CCDカメラによる小惑星の掩蔽の観測」 佐藤 勲(国立天文台)

 小惑星による掩蔽予報でおなじみの佐藤 勲先生により、CCDカメラを用いた掩蔽観測の方法と解析例をあげて説明されました。概要は以下のとおりです。

 ・I.I.を持つ人は少ないが、CCDカメラを持っている人は多いので、美しい画像を撮るだけでなく、天体観測もしてほしい
 ・CCDカメラでの観測方法は固定撮影でよい(露出時間を決めるのが難しい?)
 ・昨年は小島卓夫さんが年間3個の観測に成功した
 ・CCD観測ではデジタルデータなので、光度変化が詳しく把握できる(重星の発見など)
 ・近々、西日本を通る掩蔽があるので、ぜひトライしてほしい

写真-4 講演される佐藤さん

Dr Sato; well known observer of occultation astronomer

写真-5 CCDによる輝度変化の解析例

Sample of magnitude change using CCD camera

 5)講演「冷却CCDカメラCCDproとPLANETproシリーズについて」 笠原 誠(山梨県)

  笠原氏は数年前から冷却CCDの自作を手がけておられますが、今回はその成果を発表されました。その概要です。

 ・CCDproは、コダックのKAF-400E/LE、KAF-1602E/LEを使用したモノクロカメラ(価格は前者が\278,000、後者が\798,000)
 ・PLANETproは、ソニーのビデオ用1/2"、2/3"サイズのチップを用いたカラーカメラ   

 ・操作用のソフトも作成中である
 ・キットで頒布の予定だったが、完成品で行うことにした

・詳細は笠原さんのホームページをご覧下さい。 http://plaza.harmonix.ne.jp/~kasahara/

写真-5 講演される笠原さん(右奥は川崎さん)

6)メーカーデモ(SBIG) マイク・バーバー(SBIG副社長)、ベリー・グーリー(国際光器)

写真-6 STVの紹介をするお二人

Mr. Barber of SBIG and Mr. Gooley of Kokusai Koki

 冷却CCDカメラ市場のリーダーで、米国カリフォルニア州サンタバーバラ市に本拠を有するSBIG (Santa Barbara Instrument Group)から副社長のマイク・バーバーさんが来日され、日本代理店の国際光器のベリー・グーリーさんがアテンドされました。バーバー氏の講演は英語なので、アストロアーツ「スカイウォッチャー」の編集員である須藤さんが通訳されました。

 今回の目玉は「STV」という型式の冷却CCDビデオカメラの紹介でした。このカメラはオートガイダーの標準機ST-4に代わる製品で、画素数は少ないものの、冷却CCDを使用したビデオカメラです。仕様などは以下のとおりです(国際光器のパンフレットから引用)。

・CCDチップ TI社製TC237(656 x 480 画素、6.9 mm x 4.6 mm)
・冷却 一段冷却ペルチェ装置(自動温度設定)
・露光時間 1/100 - 656秒
・モニターリフレッシュ速度 最大1/10秒
・感度 口径20 cmでは、1秒露光時で約14等、60秒露光時で約18等
・CCDヘッド寸法 95 mm x 85 mm x 50 mm、500 g
・モニター 5インチモノクロ液晶モニター付属
・2行/24文字表示のLEDディスプレー
・価格 \368,000(送料込み、税別)

 米国内でも発表したばかりの新製品のようです。オートガイダーのみならず、画素数は少ないながらも各種の観測に使えそうです。デジタルデータなので、小惑星の掩蔽の観測では光度(輝度)変化も容易に解析できそうです。

 なお、バーバー氏の英語はとても早い上に語尾がはっきりしないので、私には聞き取りにくかったのですが、須藤氏は的確に通訳されていました。ニューヨーク生まれとはいえ、感心することしきりでした。

写真-7 左からグーリー、鈴木(節)、

バーバー、山田(座談会にて、敬称略)

写真-8 左から須藤、鈴木(雅)、バーバー、

グーリー、山田(座談会にて、敬称略)

 7)懇親会

 全般にスケジュールが押してしまい、懇親会が始まったのは19時を過ぎてからでした。冨田弘一郎先生のご発声で乾杯し、およそ2時間にわたる宴が始まりました。皆さん、食欲旺盛でテーブルの上のオードブルはたちまちの内になくなってしまいました。

 以下は私がお話しした主な方々です。

 ・鈴木雅之さん 
 FSPACEの会議室でもおなじみで、彗星と小惑星のCCD観測をされておられます。実は札天にも在籍されたことがあるとかで、当時の札天の話(進藤さん、千葉さんなど)に花が咲きました。

 ・佐藤 勲さん
 HSWでも紹介していますが、ONMニュースを配信していただいているので、ご挨拶申し上げました。小惑星の掩蔽のお話をうかがいました。そのおりにDiomedesによる掩蔽観測の結果をまとめた論文の別刷りをいただきました。生田さんなどの関係者には、後でコピーを差し上げます。

 ・福島英雄さん
 最初の講演の際の質問に答えていただいたことなどでご挨拶をしました。

 ・岡野邦彦さん
 一昨年、初めてお会いしましたが、ちゃんとしたご挨拶は今日が初めてでした。CCDのことよりも、最近お仕事関係のお話を伺えました。

 ・冨田弘一郎さん 
 いつもお世話になっていますので、ご挨拶を申し上げました。札天の方々によろしくとのことでした。また、先生のご自宅は会場の近くで、車を駆って来られました。時間のあるときに、お宅を訪問したいと思います。

 ・B.グーリーさん
 国際光器の代表であるグーリーさんとは北海道のスターパーティー以来の対面でしたが、昨年は何度かメールを交わしておりました。古潭観測所の昭和赤道儀の不調について説明すると、コントローラーをこちらに送ってくれれば対応するとのこと。メーカーよりも頼りになりそうです。

 ・M.バーバーさん
 グーリー氏の隣におられたSBIGのバーバーさんを紹介していただきました。アメリカ人らしく気さくな方でした。英語も講演の時よりはゆっくりで聞き取りやすかったのがありがたかったところです。

 アメリカではCCDを使いこなしている人が多いですかと訊くと、そうでもないとのことでした。またSBIG社はビーチの近くにあり、サンタバーバラは良い街だと言っておられました。

写真-9 左より牛渡、バーバー、グーリー

(国際光器 坂田写、敬称略)

From left to right, Ushiwatari, Mr. Barber and Mr. Gooley

続く